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グランプリ作品がコクヨ「Campusノート」の表紙になる!
キャンパス アート アワード2021 最終審査レポート

全国の中学生・高校生より寄せられたたくさんの応募作品から、栄えある本年度の受賞作品が決定しました。応募総数は昨年を大きく上回る2476点でした。グランプリ選出への最終選考に残った入選作36点は、いずれも見ているだけでうれしくなるような、力のこもった作品ばかり。一生懸命に描いている子どもたちの姿が見えてくるようです。優劣つけがたいと頭を悩ませる審査員たち。各作品の魅力を熱く語り合った結果、あるサプライズが!? 白熱した最終審査の様子をご紹介します。

キャンパスアートアワード応募作品

絵を描きたい、見て貰いたい。そんな情熱を後押しする場

キャンパス アート アワードはコクヨと読売中高生新聞(発行所 読売新聞東京本社)が共同開催する中学生・高校生を対象とした絵画コンペティションです。7回目を迎えた本年は、2021年10月29日、読売新聞東京本社(東京都千代田区大手町)で最終審査会が行われました。

審査員は、ベストセラー小説『謎解きはディナーのあとで』の表紙カバーやCDジャケットなどを手掛けるイラストレーターの中村佑介さん、写真のようにリアルな作風で知られる色鉛筆画家の林亮太さん、多摩美術大学出身で書店経営やキャラクターのプロデュースなど多方面で活躍する夢眠ねむさんです。中村さんは今回が初参加で、林さんは4度目、夢眠さんは2度目の参加となります。

落ちたものにも思いを馳せてしまう

まず、地区審査を事前に行い、中学生、高校生ともに全国6地区に分けて36点が入選作として選出されました。この中から、グランプリ(1点)、読売中高生新聞賞(1点)、コクヨ賞(1点)、地区優秀賞(6点)が選ばれます。

審査風景

審査会場のテーブルには、地元のおいしい名産品や、家族と訪れた思い出の地、あるいは知られざる名所や新しい観光スポットなど、多種多様な「イチオシ」が並んでいます。作品の裏には作者からの「作品情報」が記されており、地元への熱い思いを読み取ることができます。審査員は「これは何だろう」「わー、すばらしいね」「丁寧に描けている」などと声を上げながら、気に入った作品に票を投じていきます。

審査風景

思わず「自分の中高生時代は、こんな描写はできていなかったよ」と林さんが感嘆の声を上げれば、初参加の中村さんは、「これまで、さまざまなコンテストの審査員をしてきましたが、今回はとりわけうまいと感じました。中学生なのか高校生なのか意識しなくなるぐらい、みんなレベルが高かった」。

審査風景

また、中村さんは「一生懸命描いたけれど、うまくいかなかったところも見えるんです。それは僕らも通ってきた道だから。自分が同じ年頃で応募していたら、どういう気持ちになるだろうかと思い巡らします」と語ります。もう一歩がんばってほしいと応援する気持ちが芽生えて、ますます落としがたくなるというのです。夢眠さんも「落ちたものにも思いを馳せちゃう」。実際に、落とすのが惜しい作品が、いくつもありました

審査風景

最終選考に残る作品には、甲乙つけがたい魅力があります。作品を選ぶポイントも審査員それぞれ異なります。「最後は、3人の好みにも左右されますね。また、ノートにして素敵かどうかも重要です」と夢眠さんは言います。グランプリには届かなかったけれど、審査員として、この作品をぜひ「イチオシ」したいという作品も出てきました。そこで今年は、例年にはない「審査員特別賞」を新設することとなり、3つの受賞作品が選ばれました。

〈中村祐介賞〉

中村祐介賞

「福島の桃」菅野 美優 さん
伊達市立霊山中学校 2年生

〈林亮太賞〉

林亮太賞

「日向夏とへべす」湯淺 菜々美 さん
宮崎県立宮崎工業高等学校 1年生

〈夢眠ねむ賞〉

夢眠ねむ賞

「毎日がハレ!」阿部 瑞希 さん
私立立命館守山高等学校 3年生

表紙を飾るグランプリ作品は地元愛ぎっしりのお弁当

審査風景

パッと見ただけでは気づかなかったことが、じっくり見ていくうちにわかり、それが絵の魅力として立ち上がってくることがあります。グランプリに輝いたのは、そんな味わいのある、広島県福山市の高校3年生、飯田千紘さんの「味わい尽くせ! 福の山」です。福山の名物を12点、お弁当に詰め込んでいます。これは何だろうと、絵探し感覚で楽しんでほしいと作者は記しています。

審査風景

準グランプリの「読売中高生新聞賞」は、愛知県名古屋市の高校2年生、村崎ラマラさんの「思い出がよみがえる景観」です。幼少期に祖母と出かけた知多半島を思い出し、その忘れがたい記憶を鮮やかな色彩で描いています。! 福の山」です。福山の名物を12点、お弁当に詰め込んでいます。これは何だろうと、絵探し感覚で楽しんでほしいと作者は記しています。

審査風景

もうひとつの準グランプリ「コクヨ賞」は、京都市の高校2年生、灘瑞歩さんの「灯り」です。友人と訪れる身近なスポットである嵐山の駅のキモノフォレストライトアップを精緻な表現で描ききりました。

みなさま、おめでとうございます。

——グランプリ作品「味わい尽くせ!福の山」を選ばれた理由を教えてください。

審査風景

中村さん:僕は、有名なロケーションやモチーフではなく、知らなかったことを魅力的に伝えてくれる絵を選びたいと思ってここに来ました。本作には地元の子たちしか知らないようなローカルなものが入っていて、絵探しのアイデアも面白いし、総合的な得点が高い絵だと思います。リアルになりすぎないところや陰影、色の差も上手です。卵の半熟の表現も見事ですね。

林さん:とにかくテクニックがすごい。全部を描ききっていると感じました。同時に、絵探しで謎を仕込んでくるしたたかさも見えて、楽しかったです。彩りが美しいし、バランスも良い。ウィンナーのテカリも効いています。

夢眠さん:パッと目を引く作品ながら、落ち着いた雰囲気があって、派手さよりも、いいものが入っていそうなところが魅力的に映りました。しみじみおいしそう。余すところなく「売り」を入れる気持ちが見えるのもいい。答え合わせしながら見られるアイデアも面白かったです。

——読売中高生新聞賞「思い出がよみがえる景観」はいかがでしょうか。

審査風景

中村さん:今回、たくさんのモチーフを詰め込むという絵が多かったのですが、中でも本作は構成力が高かった。色のまとまりがよく、モチーフの大きさもダイナミックに描き分けています。知多半島について僕は知らなかったけれど、楽しそうに感じました。

林さん:この絵は色彩の明度と彩度のコントロールが上手ですね。これだけ色彩が入っていても違和感なく見せているのは、くすませるところは、きちんとくすませているからでしょう。灯台にもくすんだ青が入っていますが、ヒマワリに負けない主張がある。そのあたりが見事です。

夢眠さん:本作で最初に目を引くのはヒマワリですが、縁取られた中の景色を描きたかったのだと感じられるのがいいですね。知多半島が、家族や親戚と出かけた楽しかった思い出として刻まれているのが伝わってきます。

——コクヨ賞「灯り」はいかがでしょうか。

審査風景

中村さん:着物が透明な筒に入っており、それが光を放つ感じや、細かな着物の柄、葉っぱなど、余すことなく描きあげたという印象です。京都の嵐山は観光地ですが、コロナ禍で人がいなくなった。ここに来ないと見られないローカルなものを描いて、みんなに見せてあげたいという思いが、葉の一枚一枚に出ています。やさしい作品です。

林さん:よくここまで細かく描いたものだと、驚きました。細部まで気をつかって描いたのが伝わってきます。光の明るさのコントラストも上手で、この場にいる感じがリアルに伝わってきます。夜の空は青みを帯びているものですが、それもよく見ていますね。

夢眠さん:緻密なものは、どこを見ればよいのかわからなくなることがありますが、本作は、のっぺりすることなく、光る棒の群れが美しく見えています。引くところは引いているからなのでしょう。手数がすごいし、根性がありますね。これを見て楽しくなって欲しいという、観光地の人のホスピタリティまで感じました。

キャンパスノートの表紙になるというのは、大人が思う以上に大きな夢です

——コンテストを通じての感想をお聞かせください。

審査風景

中村さん:ローカルになればなるほど、伝えたい気持ちが強くなっているのを感じ、地方の下剋上のようでもあり、面白かったですね。今回受賞できなくても、来年また応募したら入賞するかもしれないし、それぐらいレベルの高い人たちの集まりだったと感じます。なぜ、これほどレベルが高いのか。それは、キャンパスノートの表紙になるというのは、夢があることだから、ではないでしょうか。僕も小学校4年生で賞を取った時の記念品を今も大切に持っています。賞としてみんなが使うノートの表紙になるというのは、めちゃくちゃ、うれしいことのはず。これは一生、忘れられない経験になるでしょう。そのように非現実的だと思っていた絵を描く行為が、現実的に社会とつながれる実感のある賞だから、みんな本気でやってくるんです。

審査風景

林さん:2018年から参加させていただき今年で4回目ですが、毎回、ここに来ると感動に巡りあう気がします。描くのが好きだというのが、素直に伝わってくるんです。どんな絵が出てくるのか楽しみにしていますし、自分が絵を描くときの刺激にもなっています。そして年々、恐ろしいほどに技術が高い人が出てきている。今回は、たまたま自分たちの琴線に触れたものとして選んでいますが、審査する人が変われば結果も変わるのです。このまま描き続けていけば、この子たち化けるんじゃないかな。そんな底しれない可能性を感じさせるコンテストです。

審査風景

夢眠さん:コロナ禍での2回目の参加ですが、遠くの景色より、普段食べているものとか、行かなくても思い出せる思い出とか、よりひとり一人に密着して根付いたもの、好きだから選んだものを見せてもらったと感じました。学校行事やお祭りが中止になったりしていますが、だからこそ募る思いや、見てほしい、なくならないでほしいという切実さまで絵の中に表れていました。

——絵を描く中高生へのメッセージをお願いします。

中村さん:絵の描き方の本を買ってもうまくはならない。続けているから、うまくなるだけ。それはどんな職業でも同じです。みんな、続けられずにやめていくのです。続けることは、みんなができることではないんです。うまくなることは、誰だってできる。誰だって、続けていれば才能は発揮できる。みなさん、よくここまでがんばりました。よくここまで続けてこられた。すばらしい。ここからすぐにはうまくならないけれど、続けていれば、才能は発揮できるのです。

林さん:僕は独学で始めて、素人だったのがいつの間にか絵で生活できるようになったので、作品を持ち込んでは玉砕した経験も数知れずあります。もうイラストレーターになるのは無理だ、じゃあ好き勝手に描いてやれと腹をくくったら、道が開けました。だから若いうちは、好きなように描こうよ。描くのに疲れたら、好きな作家や格好いいと思うもの、いろいろなものを見たり聞いたりして、インプットをたくさんストックしておいてほしい。それが後になって、血肉になるのです。

夢眠さん:私の時代は、学生だったらコンテストに応募するぐらいしか、絵を見て貰うチャンスはなかったけれど、今はSNSにアップすれば誰でも見てもらえる環境にあるので、定期的に絵を見てもらって、さっさとデビューしちゃうというのもありだと思っています。埋もれていても優秀な人材はいっぱいいて、描く方も見る方も、広くアンテナを張っている人が増えている。たくさん壁にはぶちあたると思いますが、チャレンジするのはいいこと。とにかく、たくさん描くこと。手数の分だけ、うまくなると私は信じています。

審査風景

思いを込めて描き上げた作品は、中村さん、林さん、夢眠さん、それぞれに大きな刺激を与えたようです。また絵を描く先輩として、後に続く中高生への熱いメッセージをいただきました。キャンパス アート アワードは、これからもみなさんのチャレンジを応援していきたいと思います。

受賞作品発表

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