2026年10月8日

「トマト畑で見た悔しさが、弁理士を目指すきっかけになった」——ゆらさんの、揺るがない朝習慣

となりの勉強家 #6 前編

弁理士――特許や商標、意匠といった知的財産を扱う、法律系の国家資格の中でも屈指の難関資格です。

今回お話を伺った、ゆらさんは、数年にわたり弁理士試験に挑戦しています。5月の一次試験、6月の二次試験、10月の三次試験という長丁場の年間スケジュールと向き合いながら、平日は毎日欠かさず机に向かっています。

「前回もギリギリ、点数が足りなくて」と少し悔しそうに教えてくれたゆらさん。それでも話しぶりはとても淡々としていて、気負いがありません。そんなゆらさんに「なぜこの資格を目指したんですか?」と何気なく聞いてみました。

北海道のトマト畑で見た、「こだわり」が消える瞬間

……トマト畑と弁理士、話の飛距離がありすぎません? と思いますよね。

実はゆらさん、大学では農学部を専攻していました。
ほうほう、だからトマト畑なんですね。……いや待って、弁理士は!?

種明かしは、大学2年生の夏まで遡ります。

「農作業について実際に経験してみたいと思って、自分で農家さんを探し、北海道のトマト農家さんに10日間くらい泊まり込みで、お手伝いに行ったんです。」

丹精込めて育てられたトマト。でも、それを出荷すると――。

「せっかくこだわって作ったトマトなのに、出荷したら他のトマトと一緒に集められて、『北海道産トマト』として一括りになってしまうんです。農家さんのこだわりが、何も反映されないまま。」

農家さんの努力や工夫が、流通の仕組みの中で見えなくなってしまう。その様子を目の当たりにして、ゆらさんは強い違和感を覚えたといいます。

「こんなに頑張って作ったものに、なんで付加価値をつけられないんだろうって。そこから、ブランドや商標のことに興味を持ち始めました。」

個人で販売できる仕組みを作る道も考えたそうですが、最終的にゆらさんが選んだのは、「法律の側から、誰かの“こだわり”を守る仕組みづくりを手伝う」という道でした。

おぉ……トマト畑と弁理士が、ここでぎゅんとつながりました。

「幅広く対応できる弁理士」を目指して

大学卒業後、ゆらさんは一般企業への就職ではなく、特許事務所への就職を選びます。

「知り合いに弁理士として働いている方がいたため、職業としては以前から知っていました。一般的にはあまり馴染みのない職業だと思いますが、そうした意味では私にとって比較的身近な存在でした。仕事内容について詳しく知っていたわけではありませんでしたが、調べていく中で、自分の目指すところにぴったりの仕事だと思い、興味を持つようになりました。」

現在は特許事務所に勤務しながら、資格取得を目指して学習中。目指すのは、商標だけに強い専門家ではなく、特許や意匠まで幅広く対応できる弁理士だといいます。

「まずは資格を取ってからがスタート、というところもあるので。まだまだ道半ばですね。」

そう話すゆらさんの表情には、気負いよりも、静かな手応えのようなものが感じられました。

5時半起床、5分以内に机へ。“朝一番”を死守する理由

そんなゆらさんの学習スタイルで、まず驚かされたのが朝の潔さです。

「平日は朝5時半に起きて、5分以内に机に向かうようにしています」

5分以内。二度寝が入り込む隙、ゼロです。布団の温もりに後ろ髪を引かれている場合ではありません。
起きたらまず電気をつけ、間髪入れずに机へ。学習時間は平日で2〜3時間ほど。しかも――。

「毎日、絶対やります。1日出かける日でも、朝1時間くらいはやるようにしてますね。」

なぜそこまで“朝”にこだわるのか尋ねると、返ってきたのは実にシンプルな理由でした。

「帰ってから勉強するのって、正直やりたくなくなるんです。仕事で帰りが遅くなる日もありますし。だったら先に朝やっちゃえば、『今日はもうやった』って、気持ちよく1日を過ごせるので。」

夜は23時から24時には就寝。朝型の生活リズムを崩さないことが、日々の学習を止めない一番の土台になっているようです。

スマホ対策は、「物理的に使えなくする」仕組みづくり

勉強中、気づいたらスマホを触っていた——そんな経験、ありませんか? 社会人にとって永遠の課題ともいえる、勉強中のスマホ問題。ゆらさんの対策は、意志の力に頼らない、ちょっと面白いアプローチでした。

「YouTubeの『QuizKnockと学ぼう』というチャンネルが好きで。25分集中して5分休憩する動画を流しながら勉強してるんです」

QuizKnockのメンバーが一緒に25分間黙々と作業する様子を映した、いわばポモドーロ形式の“勉強お供”動画。これを再生しておくことで――。

「その動画を流していれば、物理的にスマホが使えなくなるので。」

なるほど、見たい動画を再生させておくことで、SNSなど他の誘惑に手が伸びなくなる、というわけです。誘惑に「負けない」んじゃなくて、そもそも負ける隙を作らない。発想の勝ちです。もちろん、通知をオフにするなど、自分の性格をよく理解した上での、無理のない自己管理が印象的でした。

ここまで自分を律する仕組みを整えていると、頑張った自分へのご褒美もありそうなものです。そう思って聞いてみると、返ってきたのは意外な答えでした。

「勉強自体は苦じゃないというか、学んでいる分野自体がすごく好きなので。」

だからこそ、特別なご褒美もいらない。そう言い切れてしまう人、なかなかいません。多くの人が「頑張った自分にご褒美」を必要とする中、ゆらさんの動力源は「その分野が好きだから」という、シンプルな一点に尽きるようです。

そんなゆらさんが、“外の力”を借りている数少ないものの1つに、やる気ペンがあります。

なんだやる気ペンの宣伝かと思ったあなた、大丈夫です! 後編には、こだわりの勉強法がたくさん登場します。条文への書き込みから、“白紙勉強法”まで、独自の勉強術に迫りますよ。

細部まで理由がある、ゆらさんならではのこだわりが続々出てくるので、ぜひ後編もお楽しみに。

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