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手帳って使いこなさなくちゃいけないのか問題~文具自分紀行・その1

2017.01.06

手帳って使いこなさなくちゃいけないのか問題

「手帳が使いこなせない」。そんなお悩みを、自他共に認める文房具オタクのヨシムラマリが一刀両断。手帳は「使いこなす」ものではなく、目的に応じて使い分けるべきものらしい。また、たまたま買ってしまった「手帳」に縛られることもないという。手帳が続かないそこのアナタ、必読です。

#手帳活用術

文房具をめぐる自分の内面への旅

どうも、ヨシムラマリです。今月からは「文具自分紀行」というタイトルの元に、私が日頃から文房具をめぐって「あーでもないこーでもない」と考えていることについて書こうと思う。思考の道筋...というほどスマートでもない紆余曲折をあえて公開する理由は、それを読む人にもまた「あーでもないこーでもない」と悩む楽しさを感じて欲しい、そしてあわよくばこれを機に文房具の沼に落ちて欲しい、という純粋な下心からである。おいでませ、こちら側の世界へ。

記念すべき1回目は新年ということもあり、この時期関心が高まっている「手帳」について考えてみたい。

 

「手帳が使いこなせない問題」の問題

「実は私...手帳が使いこなせないんですよね...

こちらが文房具オタクであると知ると、少なからぬ人が神妙な面持ちでこう打ち明けてくれる。そのたびに、私は心の中がモヤッとする。そして、「手帳は使われるもんじゃない!使うもんだ!!!」と叫びたくなるのである(そして、ガマンしきれずに実際に叫ぶこともある)。

「手帳が使いこなせない」という言葉に、なぜこれほど違和感を覚えるのかといえば、おそらくその裏に「手帳に合わせられない自分を恥じている」ようなニュアンスを感じるからだ。ちょっとそれって、主客逆転してないか?という違和感である。

とはいってみたものの、実はそうやって悩む人の気持ちもよくわかる。すごーくわかるのだ。雑誌や本でみる「達人」の手帳はたしかにキレイでステキで、それに比べて自分の手帳はなんだか雑然としていてスカスカで、まるで自分の人生そのものがスカスカであると否定されたかのような惨めさに枕を濡らした夜だって一度や二度ではない。その感覚は一体、どこからくるのだろうか。

私は文房具を「情報を取り扱うための道具」である、と考えている。その中でも手帳は「時間」という情報を扱う文房具だ。では、時間とは何か?どのようなことにどれだけの時間を使うかは、即ちその人の人生そのものといっても過言ではない。つまり手帳は、人生の鏡だ。紙面の充実度がそのまま人生の充実度を反映しているような気持ちになるのは、ごく自然な感覚といえるだろう。

だが、ここで取り違えてはいけないのは、手帳をキレイに埋めるのは「目的」ではない、ということだ。時間をステキに使って人生をステキにするのが目的なのだ。その結果として、手帳がステキに埋まるのだ。「殴り書きでも妙にカッコいい手帳」というのは、その人がカッコいい人生を送っているから自然にそうなっているのであって、カッコいい人間になろうとして手帳に殴り書きをしてもダメなのだ。

自分の時間の支配者はあくまでも自分。手帳はそれを助けてくれる「道具」であって、目的ではない。まず、ここはしっかりと肝に銘じておきたい。

 

「道具」が使いこなせないのは単なるミスマッチ

手帳から主導権を取り戻したところで、改めて「手帳が使いこなせない」とはどのような状態なのか考えてみよう。手帳は道具である。そして道具が使いこなせないと感じるのは、単純なミスマッチが原因であることが多い。私が今まで見聞きしてきた中では、以下の3つが特につまずきやすいポイントかと思う。

「自分の目的がわかっていない」

「目的に合った手帳を選んでいない」

「運用がうまくいってない」

それぞれ、具体的に見てみよう。

 

手帳の目的は大きくふたつ

手帳を使う目的には、大きく分けてふたつの方向性がある。即ち現在を起点として、「過去」と「未来」、どちらを目指すか、ということだ。

過去をメインに扱うのは「記録型」の手帳である。過ぎゆく時間を紙面に定着させ、振り返りを可能にし、いろんなことがあったなぁ、私って結構がんばってるよなぁ、と充実感を得るためのものだ。具体的には、「ほぼ日手帳」やコクヨの「ジブン手帳」、三年日記や十年日記のようなものがこれにあたる。

逆に未来を扱うのが「計画型」の手帳である。スケジュールを管理し、よりよい計画の立案と行動を可能にするために使われる。いわゆるビジネス手帳の類はほぼこれにあたるといってもいいだろう。管理したい時間のスパンによって、ウィークリーや、マンスリー、ガントチャート等、さまざまなフォーマットが用意されている。

ここで大切なのは、自分の目的がどちらにあるのかをしっかりと見極め、それに合った手帳を選ぶことだ。仕事の計画を立てることが目的なのに「記録型」の手帳を選んでも、それは合っていないのだから使いこなせなくてあたりまえ。11ページの「ほぼ日手帳」を使って長期計画を立てるなんて、そもそもが無理のある話で、それを強引にやることを「使いこなす」とはいわないのである。おい!聞いてるか、新入社員だったころの私よ!

 

目的が複数あれば手帳も複数冊あっていい

大工道具などを引き合いに出すまでもなく、道具を目的によって使い分けるのは当然のことだが、「手帳が使いこなせない」と悩む人ほど、「手帳は1年に1冊でなければいけない」と妙な使命感を抱いていることが多いように思う。手帳だって目的が違えば、それによって違う種類のものを同時に使ってもいいのである。

ちなみに今年の私は「ほぼ日手帳」と「ダブルスケジュールダイアリー進行」(ミドリ)の2冊体制だ。記録型の「ほぼ日手帳」は主にネタ帳として、家に置きっ放しで使っている。読書や映画鑑賞、運動等、プライベートでの行動記録も一緒に書き込んでいる。

仕事のスケジュール管理は会社指定であるGoogleカレンダーをベースにしつつ、デジタルではやや物足りない長いスパンでの一覧性を補うために、マンスリーとガントチャートが1冊にまとまった「ダブルスケジュールダイアリー進行」を併用している。こちらは仕事でしか使わないので、基本的に職場に置きっ放しだ。

 

「手帳習慣」の作り方

さて、目的もわかった、それに合った道具も選んだ。でもやっぱり「手帳が使いこなせない」と悩んでいる人は、手帳の運用、即ち「習慣づけ」がうまく働いていないことが多いように感じる。

手帳は「書いては見返す」を繰り返すことで、はじめて価値が出るものである。まず書き込まなければ時間が可視化されないし、可視化されたところでそれを見なければ振り返りにも計画にも役に立たない。いかに書くこと、見返すことを習慣づけられるかが勝負といってもいい。

そうはいってもこれがなかなか大変。面倒くさかったり忘れたりで気がつけば手帳からフェードアウト...という人も少なくない。私自身もかつてはそのひとりだった。なので考えた。どうすればこの問題を解決できるのか?考えに考えてたどり着いた答えは非常にシンプルで、それは「手帳を見る」という予定を手帳に書く、というものであった。

...いや、冗談ではない。どこまでも本気だ。実際、私は「手帳を見る」というリマインダーを日次で設定している。とにかく習慣が身につくまでは、なんらかのアラートが出るようにしておくのが有効なのだ。

まずは11回、5分でいいのである。私はだいたい朝、Googleカレンダーと仕事用の手帳の同期をとり、先の予定をパラパラと確認するようにしている。かつては予定が発生する都度、両方に書きこんでいたが、これがとにかく面倒で続かなかった。無理は禁物と、思い切って11回というルールにしたら、難なく習慣にすることができた。同期が完全でないことに当初は不安もあったが、現在までのところそれで特に困ったことはない。私にとっては、「115分」が手間と効果のバランスがちょうどいい「落としどころ」だったのだ。

 

「手帳は1年に1冊」じゃなくてもいいじゃない

今回は自分のことを色々と例にとったけれど、これはあくまでも「私」のケースであって、誰にでも適用できるやり方であるとは考えていない。それと同様に、どんなに手帳術の本や雑誌を読んでも、そこに「あなたと同じ人」はいないのだから、そのまま使える「正解」はどこにもない、ということになる。

自分が何をしたいのか、どんな時間を過ごしたいのかを知っているのは自分だけだし、どんな手帳が合うのかだって、とにかく失敗もしながら自分で使って試してみるしかないのだ。

それに先にも述べたが、「手帳は1年に1冊しか使ってはいけない」という縛りもないのである。合わない手帳を無理して使い続けることは「使いこなし」でもなんでもない。ただのガマンだ。時間は有限、ガマンして1年が終わってはつまらない。合わないと思ったら、使いかけでもどんどん替えてしまえばいいのだ。それは別に恥ずかしいことでもなんでもないし、そのことであなたが手帳に対して引け目を感じる必要もない。ただの「文具性の不一致」、というやつだ。

手帳を考えることは、人生を考えること。手帳シーズンの売り場から沸き立つ高揚感は、引っ越し前に間取り図を眺めているとき、あるいは旅行の計画を立てながらガイドブックを眺めているときのワクワク感に似ている。この先に待っている時間はきっとステキに違いないという漠然とした期待感、あるいはそうしてやるぞ、という意志。それを感じることこそが、手帳について考える醍醐味かもしれない。

(ヨシムラマリ/inspiより転載)

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