2026年3月13日
第8回 世界観のタネ
やる気ペンリーダーが時間外に書くコラム🌱YARUKI OFF(やる気オフ)
「やる気ペンの世界観って、なんだか独特ですよね」
そう言っていただく機会がよくあります。
もちろん、一人の人間で作ったものではありませんから、多くのスタッフやユーザーとのあいだで起きた「化学反応の集積」と呼ぶのが正しいでしょう。ただ、最初にラフ案を描いた僕の頭の中には、はっきりとした「種(タネ)」がありました。
それは、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデが遺した二冊の本。「モモ」と「はてしない物語」です。
この二冊は、小学生の頃から僕の手放せない相棒として、引っ越しを繰り返した今もずっと本棚に居座り続けています。気がつけば、数十年もの時間を共に過ごしてきたことになります。実を言うと、自分の子どもの名前もこれらの作品から拝借したほどで、僕にとっては単なる愛読書を超えた「人生のバイブル」のような存在なのです。
エンデという作家は、これらの作品を通じて「本を読む」という体験そのものを、根底から再定義してしまったのだと僕は思っています。
たとえば、目に見えない「時間」を美しい花として表現するような、鮮やかな可視化の発想。表紙の手触りや挿絵・文字の色に至るまで、五感のすべてに問いかけてくる圧倒的な没入感。そして何より、紙のページをめくるという自分自身に合ったテンポの時間の中で、人間が人生の中で辿る「魂のプロセス」を体験し、いつの間にか読み手を「本当の自分」へと導くストーリー……。
美術館を飾るような芸術作品ではなく、あくまで子どもたちが手にする「商業プロダクト」でこれほどまでに深遠な世界を構築できる人間がいることに、僕はただただ溜息をつくばかりでした。
そして十年前。文具という新しい分野に飛び込んだ僕は、あろうことか「これに挑戦したい」と不遜にも思ってしまったわけです。もっとも、僕が向き合った分野は、スマートフォンと組み合わせた「IoT文具」という少し現代的な道具でしたが。
当時の青臭いイメージは、その後さまざまなアイデアと混ざり合い、形を変えながら、今の「やる気ペン」の中に静かに息づいているように思います。
もし、このペンでの体験を通じて、次の世代の誰かが新しいインスピレーションの種を受け取ってくれるようなことがあれば、それは作り手として、これ以上に嬉しいことはありません。
自らの心で感じる時間を大切にしながら、このはてしない道を、一歩一歩進んで行こうと思います。
【今週の気なる言葉】
空想の世界へ行く道は、本の中にある。でもそこから戻ってくる道は、また別の本の中にあるのではない。自分自身の、本当の人生の中にあるんだ。
(ミヒャエル・エンデ)

やる気ペンリーダーが時間外に書くコラム
YARUKI OFF(やる気オフ)
「やる気ペンプロジェクト」を立ち上げてから約10年となりました。リーダーとしてジタバタともがく毎日ですが、時の流れはどんどん加速し、ますます先行きが不透明になってきたように感じます。週に一度その激流から離れ、今見えている風景や心がザラッとした出来事などを書いてみたいと思います。すぐに役に立つことはあまりないかもしれませんが、素直に自分の五感に従って、週一回お届けできたらと思います。

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