2020.09.17
1Kの部屋でも快適に在宅勤務!~テレワーク疲れの解消と心地よい生活空間を両立~
長期化するテレワークで心身に疲労がたまっていませんか?今回は、「テレワーク疲れ」の要因を徹底分解。中でも「身体的な疲れ」を一挙解決したコクヨ有志プロジェクトの活動全貌をご紹介します。狭い空間で働くことを余儀なくされているワーカー必見です!
テレワークをめぐる現状
2020年4月の緊急事態宣言以降、それまで想定さえしていなかった自宅からのテレワークに突然取り組むことになった方も多いと思います。当初は誰もが戸惑ったビデオ会議に頼るコミュニケーションでしたが、宣言解除後にはテレワークの恒常化を決断したり、オンラインコミュニケーションを前提に本社機能の地方移転に踏み切る企業も出てきています。
労務管理やコミュニケーションの手法に未だ課題が残ると言われながらも、ポストコロナ時代の働き方の選択肢としてテレワークは定着する可能性の方が高いと言われています。
一方で、「出社するよりもテレワークの方が疲れる」という声も少なからず聞こえてきます。実際、日本生産性本部の調査(※1)によると、「自宅での勤務の満足度」は、「満足」と「どちらかといえば満足」の合計が57%ある一方で、「満足していない」「どちらかといえば満足していない」割合も43%と半数弱いる結果になっています。また、同じ調査で、「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」に対しては、63%が肯定的なのに対し、残り37%は否定的で、必ずしも「大多数が満足」「継続希望」とは言えない結果になっています。
(※1)公益財団法人 日本生産性本部「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」
大きく二分される結果の背景にはいったい何があるのか。
今後、この新たに増えた働き方の選択肢を有効に使いこなすためには、この「疲れ」「不満」の要因を解明し、できる限り解消しておくことが大事になってくるのではないでしょうか。
「テレワーク疲れ」三つの理由
一言で「疲れる」といってもその理由・正体は大きく3つの類型に整理できます。
①精神的な疲れ
上司・部下・同僚とコミュニケーションがうまく図れないことによる不安・ストレス、職場にいる時は何とも思っていなかった雑談、いわゆるインフォーマルコミュニケーションが激減することによるストレス、あとは、社会の急激な変化に伴う「これからどうなるんだろう」という漠然とした不安などが「精神的な疲れ」の典型的なものです。
もともとスペシャリストが多いIT系や研究開発・リサーチなどの職種においてはあまり問題にならない一方で、チームワークを重視する職場であればあるほど、失われたと感じられたものが大きかったかもしれません。
4~5月の緊急事態宣言中に大きく話題になったこの「精神的疲れ」ですが、ウィズコロナ時代がある程度続くことを全員が理解し、制約のある環境の中でどうしたら課題解決できるか、多くの人が努力や工夫を重ねることで少しずつ解消の方向にあるようです。
コクヨの中でも、チームごとにランチミーティングで他愛ない話ができる時間を作ったり、チャットシステムを活用して気軽に雑談できる環境を作ったり、オフィスごとに誰でも参加できるミニセミナーを企画したりすることで、不安を解消すると同時に、場所の制約を超えて、これまで知らなかった新しい出会いをつくるといったメリットを生み出す結果にもなっています。
参考)MANA-Biz コロナ渦の社員の心をつないだ10分セミナー
②時間的な疲れ
仕事が好きで、できてしまう人ほど陥りやすいのが時間的な疲れ。やりたいことややるべきことがたくさんある、もしくはやるべきことを次々に見つけてしまう人ほど、陥りやすい疲れです。
なくなった通勤時間をそのまま仕事時間へとスライドさせ、さらに夜遅くまで延々働き続けるという人もいれば、いろいろな人からミーティングやブレストや相談の依頼を受け続け、PCの前にはりつけの状態になるパターンも・・・。
この問題の解消には本人の意識改革が何より大事になります。自分自身の限界点を認識し、その時々の体調に合わせてスケジュールをコントロールしたり、依頼される会議やミーティングの時間調整を意識的に行ったり、仕事と生活のメリハリのつけ方を工夫するなど。
万が一、本人の意思に反して健康を脅かすほどの仕事量がある場合は、まずは上長はじめ周囲に相談をしましょう。これはテレワークであろうが出勤していようが不変です。
③身体的な疲れ
「テレワーク疲れ」の最後が身体的な疲れ。「腰が痛い」「肩がこる」という問題です。今年は特に、外出自粛に続く災害級の猛暑により運動不足になりがちなことも遠因としてありますが、直接的な原因はやはり仕事をする部屋の環境にあります。
日本の住宅事情において、仕事専用部屋を持っているワーカーは決して多くはありません。食事をしたり、リラックスするために作られた空間に、突如「仕事」が入り込むことで無理が生じ、それが肩や腰の疲れとなって出てきていると言えるでしょう。
「姿勢をよくしよう」「1時間に一回はストレッチをしよう」という意識を持つことで解消できるうちは大きく問題ありません。しかしながら、これから長くテレワークを続ける可能性がある方は、やはり空間の役割を見直し、できる範囲で環境改善を図ることをおすすめします。
座卓で床座り8時間!?部屋が狭い単身世帯の「疲れ」に着目
今回は「テレワーク疲れ」3要因の中でも、物理的な解決策が求められる「身体的な疲れ」を実際に解決した事例をご紹介します。
実は、コクヨには文具を製造・販売する事業部と、オフィス家具の製造およびオフィス空間の提案を行う2つのメーカー事業部門があります。
この2つの事業部、ビフォーコロナ時代は、あまり一緒に何かを考えたり、協働する機会は決して多くありませんでした。
しかし、コロナ禍で外に出られなかった今年5月、「今だからこそ自分たちが普段蓄積してきた知識やノウハウを出し合って一緒にやるべきことがあるんじゃないか!?」とひそかに立ち上がった有志10人、それぞれ在宅勤務を続けながら「テレワークの課題解決」に向けてディスカッションを始めました。
オフィス空間のプロと、事務用品のプロが知恵を出し合ってできることとして、真っ先に挙がったのは、「身体的疲れ」の解消でした。そして、この時期、多くの企業や個人がインターネットに出す在宅勤務環境に関する情報を片っ端から調べる中で一つの事実に気づきます。
1Kやワンルーム暮らしの独身世帯に対するソリューションが少ない
一人で暮らす独身世代や、単身赴任の人が暮らすスペースの多くは20~30平米程度の空間。ここにベッドを置くと、残るスペースはごくわずか。工夫できる余地が限られ、結果的に座卓にPCを広げたり、ベッドの上にPCを置いて、床に座った状態で一日8時間以上働くことを余儀なくされている現実が見えてきました。
生活空間を犠牲にしない快適テレワーク環境ができるまで
まずは「狭小空間における快適ワークスペースづくりをやってみよう」という目標が定まり、即座に、「せっかくやるなら、図面を書いて終わるのではなく、実際の空間をリニューアルしたい」と、プロジェクトメンバーで一人暮らしのAさんの自宅リニューアルが決定しました。
課題は「ワーク」と「ライフ」が混然一体化しない形での両立
課題の特定にあたって、まずは本人へのヒアリングをスタート。
自他ともに認める「お仕事好きAさん」の自宅選びはまず立地。職場への通勤時間を最小限にしたい分、広さは二の次でした。1Kのマンション、部屋の広さは5.5畳。それでも、出社して働き、自宅はあくまで休む場所・寝る場所、と使い分けていたビフォーコロナ時代は何の問題もありませんでした。
ところが、コクヨで在宅勤務が段階的に始まった3月から状況は一変します。
原則、座卓にPCを置いて床座りで仕事をしながら、どうしても疲れてくるとベッドの上に移動。壁を背にして伸ばした足の上にPCを置いて作業。さらにその体勢にも疲れてきたときは、「奥の手」のキッチン。ガスコンロの上に鍋を置き、その上にPCを置いて立って仕事をする。外出自粛期間中は、この3種類のスタイルをぐるぐると繰り返しながら、腰の痛みや肩こりに耐える毎日だったとのこと。
基本的にはローテーブルの前にクッションを置き、床に座って仕事。しかし体への負担が大きいため、一日何度も場所を移動。移動先はベッドの上やキッチン。キッチンでの立ち仕事にあたって、高さ調整には鍋を利用。
経済活動が少しずつ戻ってきた6月以降は、オフィス出社率を50%までにするという会社の方針もあり、在宅勤務に加えて、週に1回程度の出社と、近所のカフェも利用しながら仕事を続けてきました。
とはいえ、8月に入り、これからも在宅勤務が続くことで普通の健康を維持できるかどうか日に日に不安になると同時に、これまでしっかり区分けしてきた「ライフ」と「ワーク」があまりにも混然一体になることに伴う集中力の欠如も課題として浮上していました。
有志プロジェクトはこうした本人へのヒアリングを通じて、「狭小空間においても、ライフの充実とワークへの集中力、両方を叶えるWORK@HOMEの実現」を課題に据えて具体的検討に入りました。
空間プロフェッショナルの視点~縦のスペース活用と移動できるデスク・イスを~
ヒアリングに続いては「現地調査」。自身もオフィス家具の事業部に所属するAさんに部屋のサイズを正確に測ってもらい、空間プロフェッショナルが図面を作成。ここにどのように家具を配置していくのかを検討していきます。
Aさんの部屋の図面
ポイントは、
・床面積が小さい分、縦の空間を有効活用する
・テーブルは可動式のキャスター付きにして柔軟な使い方をする
・テレビはテレビとしてだけではなく大画面モニターとしても活用する
・イスは長時間座れて、なおかつリビングテイストにあうものを選ぶ
たくさんの図面を描いてきた空間のプロならではの視点が次々と図面に反映されていきます。
縦の空間を活かすためラック使う。正面から見た図面(左)と横から見た図面(右)
文具プロフェッショナルの視点~整理収納と持ち歩きの両立を~
一方の文具プロフェッショナルは、自宅における書類収納の視点に加え、自宅・会社・カフェと移動しながら働く実態に着目しました。
・ラックの上の棚にファイルボックスを並べることで、比較的安価にして十分な書類収納スペースを確保する
・ファイルボックスは事務用品テイストではない、部屋の雰囲気にあう色合いに留意
・筆記具、電卓、付箋、クリップ等もまとめて収納・携帯できる入れ物の導入
・バッグインバッグを「バックの中」以外でも活用
・強力磁石付きのフックを使って配線整理
というように、細かいところまで提案していきました。
文具プロフェッショナルたちが厳選したAさんのワークスタイルにお役に立つグッズ
会社と違ってOAフロアではない家庭の配線にはマグネットフックが有効
体勢を自由に変えられるレイアウトに決定
プロジェクトの議論を経て、狭いながらも、3パターンの働く態勢を実現する夢プランが完成しました。
ローテーブルを使用することも、三角テーブルを使うことも、三角テーブルとベッドを利用することも可能。
狭い空間でも体勢や気分を自由自在に変えることができるプラン。劇的改善に向けた期待が膨らみます。
そして商品発注、納品。日頃からさまざまなオフィスに家具を運んできた配送と組み立てのプロが参上してくれました。
配送と組み立てのプロ参上、組み立て作業は手早く短時間で。
劇的リニューアルの全貌をお見せします
こうして、Aさんのお部屋の劇的リニューアルが完了しました。
Before これまで床に座って腰痛に耐えながら仕事をしてきた・・・
After 身体の痛みを大幅軽減、働きやすさと暮らしやすさを両立する5.5畳!
なんということでしょう ♪
大物の家具は「キャスターつき三角テーブル」と「ラック」とiFデザイン賞も受賞した「会議用のイス」。
イスは座面に厚手のモールドウレタンクッションを採用し、見た目の割に長時間の着座にも耐えられます。
テーブルはキャスター付きなのでラックのモニター前で使うのはもちろん、
ベッドに座って使うこともでき、使わないときはラック下に入れて収納することも可能です。
ベッドの上にモバイルクッションを置くことで、普通の「ベッド」が「仕事でもつかえるソファ」へ大変身
敢えてテーブルを使わずラックの棚板をデスク代わりにもできます
三角テーブルを移動させることで部屋の「隅っこ」を有効に活用することもできます。
少し気分を変えたいときや、壁を有効活用したいときに。
ラックの上段には大中小とサイズの違うファイルボックスを置き、書類・カタログ・雑貨などを分けて収納。
テレビの手前にある「ハコビズ」は文具や化粧水などONとOFFどちらの道具を入れても合うスグレモノ。
ラック手前に掛けているのは実はバックインバック。自宅での小物収納にも使えます。
出かける時はこのままカバンの中へ。すぐに持ち歩きが可能です。
苦楽を共にしてきたローテーブルは残すことができました。
モバイルクッションの活用で以前よりも姿勢を維持しやすくなります。
ぐらついて困っていた鍋の代わりにコンロ専用のパソコン台も制作。
スタンディングワーク@キッチンもだいぶ安定してできるようになりました。
身体の疲れと生活の満足度は業務効率に影響する!
一日の生活身体の疲れが業務の効率に影響するのはもちろんのこと、自らの生活に満足できない状況が続けば、集中力や発想力にも悪い影響が出てきます。
・・・そんなことは言われなくても分かっている、と思われるかもしれませんが、今、意外と多くの人が、さまざまな制約から課題解決できずにいるのではないでしょうか?
在宅勤務やテレワークでは、小さな子供がいる家庭や共働き世帯の課題にどうしても目が行きがちです。独身者は、本人も、周りも、「一人だからどうにでもなるでしょう」とか「多少の我慢は仕方ないでしょう」と思われがち。しかし意外と無理が積み重なっているかもしれません。
「あ、自分のことだ」「あ、あいつ、そういえば・・・」と思い当たる人がいらっしゃいましたら、今回の実験リニューアル、参考にしていただければと思います。
最後に、実際にお部屋リニューアルを行ったAさんのリアルな声をお届けします。
この半年、肩こりや疲れが慢性化していました。座卓では腰も足も痛くなるし、ベッドで布団にもたれると猫背になるし、立ってPCを置くキッチンのお鍋の上はガタつくしで、よく考えたらどれも無茶苦茶な環境だったと思います。「仕事に集中できる環境」と「OFFタイムの空間」を両立するお部屋づくりに悩んでいました。
最初はオフィスで使う家具を自宅に置くことにちょっと抵抗もありましたが、壁の色とトーンを合わせれば全然フィットするんだなと思いました。今は姿勢が改善されてヘンな疲れがなくなり、日々何をするにも快適です。このソリューション、悩める独り暮らしの方々の参考になればいいなと思います。
今回のリニューアルで使用した家具と文具
今回Aさんのお部屋リニューアルで使った家具と文具は次の通りです。「ウチは狭いから無理」と諦めていたお部屋の環境改善にも、ぜひ参考にしてみてください!
今回ご紹介した家具はこちらのショップでお求めいただけます。
収納ボックス〈NEOS〉
超強力マグネットフック<タフピタ>
バッグインバッグ
ツールペンスタンド〈Haco・biz〉
KOKUYO MEシリーズ