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アフターコロナの「働き方の変化」から「大人の学び」を展望する

2020.07.28

コロナで働き方はどう変わる!?そこで求められるスキルとは!?

新型コロナウイルス感染拡大は日本のみならず世界を一変させました。来るべき変化が準備期間なく突然訪れた、といった方が正しいかもしれません。社会全体が変わる時だからこそ、年齢を問わず、スキルの棚卸と新たな学びが必要ではないだろうか。今回はポストコロナに向けた「働き方の変化」という視点から、個々人の「学びの変化」を展望します。

#テレワーク#ニューノーマル#ライフシフト#言語化力

緊急事態宣言下にあった今年4月~5月を通じて、これまでの人生で経験したことのないような「転換点にいる」という思いを持った人も少なくないのではないでしょうか。多くの人が、何ら準備をする間もなく、自宅待機や在宅勤務を余儀なくされたことで、これまで考えなかったことを考えたり、気づかなかったことに気づいたり、一方で、先の見えない漠然とした不安に駆られたりもしました。

これからどんな社会になるのか、自分の仕事はどう変わるのか、自分に何ができるのか、どんな仕事を、どこで、どんな風にしていきたいのか。そのために今、自分に何が足りていて、何が足りないのか...。思考する中で、何かしらを学び始めたり、調べはじめたりしている人も少なからずいるのではないかと思います。

そこで、今回、世の中の「働き方」の変化から「大人の学び」を展望するシリーズを企画しました。

第1回は、コクヨ株式会社 ワークスタイル研究所の研究員 田中康寛(たなかやすひろ)に、ポストコロナにおける「働き方」の変化と、その延長線上にある個々人の学びの変化について、現在の考察を聞いてみました。

※本記事でご紹介するレポート「ポストコロナに向けた働き方の変化」については詳細版のダウンロードが可能です。
記事の最後でご案内しています。

個人が働く場所・時間・内容を意思を持って選択する時代へ

Q:冒頭に普段の仕事について軽く自己紹介をお願いします。

ワークスタイル研究所でリサーチ活動やコンサルティング活動をしています。ワークスタイル研究所は、主に働き方(style)と働く環境(place)のあり方を研究・提言している組織です。働く仕組みと空間をつくるマガジン『ワークサイト』も運営しています。私個人としては、「一人ひとりの"働く"を豊かにしたい」という思いを持って日々研究・活動をしています。

参考)働くしくみと空間を作るマガジン[ワークサイト]

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コクヨ株式会社
ワークスタイル研究所 兼 ワークスタイルイノベーション部
田中康寛

Q:ありがとうございます!では、いきなりの本題ですが、今回のコロナでは、働く環境が大きく変わりました。今後の日本企業における働き方はどう変化していくのでしょうか?

コクヨ独自で全国3,000名のワーカーを対象に意識調査を行い、ポストコロナに向けた働き方の変化として、次の11の傾向を捉えています。

postcorona1.pngポストコロナに向けた11の働き方の変化(クリックで拡大します)

従来は、オフィス集合型のワークスタイルが一般的でした。社員は基本的にオフィスに集まり、常に近くにチームメンバーがいるという環境で仕事をする。それが、当たり前だったわけです。しかし、コロナで強制的に在宅勤務が始まると、「なんだ、オフィスにいなくても十分働けるじゃないか」と気づく人が増え、都市分散型のワークスタイルに変わる兆しが開けました。

同時に、仕事の取り組み方も「オペレーション型」から「クリエイション型」へ変化しつつあります。すぐ横に上司がいない環境では、言われたことをやるのではなく、一人ひとりが今必要な仕事は何か自律的に内省し生み出す働く姿勢も求められます。

また、分散型のワークスタイルにおいてよく聞かれる課題の一つがマネジメントスタイルです。このような環境下では一から十まで細かく指導する「管理型」から、仕事の進め方はメンバーを信頼しつつ相談を受けながら成果をマネジメントする「支援型」になるなどの変化が予想されます。

まとめると、コロナ以降は、より働き方の自由度が高くなり、働く場所や時間、内容を個人が意思を持って選択する方向性にシフトすると予測しています。

また、こういった働き方のシフトは、意思の強さと変化対応のしなやかさをワーカー個人に求めることにもなります。つまり、仕事も働き方も組織から与えられるものと受動的な姿勢で構えるのではなく、一人ひとり自分のワークデザインやライフデザインを再構築し続ける必要が高まるといえます。

postcorona2.png仕事内容・会社と個人の関係性・働く場・時間・コミュニケーション・マネジメントはどう変わる?
(クリックで拡大します)
 

 

ポストコロナで必要なスキルその1「言語化力」

Q:なるほど。こうしたポストコロナの環境の変化に対応できるのはどんな人材ですか?

まず、コミュニケーションのオンライン化に適応できる「言語化力」の高い人が挙げられます。

日本文化にはハイコンテクストなコミュニケーションが根付いていると言われています。これは「空気を読む」という言葉に代表されるように、過去の文脈や共通体験を重視するようなコミュニケーションスタイルです。

ところが、コミュニケーションのオンライン化が進むと、求められる作法がこれまでとは異なってきます。これまでのオフィス集合型の働き方では、皆が近くにいて「空気」を察し、すべてを言葉にしなくとも、互いの表情や所作から情報を読み取ることも多かったかと思いますが、遠隔ではそれらを知ることが難しいので、言語に置かれる比重が大きくなります。

オンラインコミュニケーションにおいては、それまでの文脈や自分の状況を相手は知らない前提で、伝えるべきことを伝えきらなくてはいけないので、論旨を構造的に整理し文章に昇華する力を鍛える必要があるでしょう。さらに言うと、「言語化力」が低いと、相手に「何を言っているか分からない」「自分都合のコミュニケーションばかりだ」と受け取られ、仕事の幅が狭まる可能性すら考えられます。

まずは、相手の立場を慮って伝えたいことを構造化する習慣を持つと同時に、誤解を生まぬよう状況共有の頻度を高めるなど言語化の質と量を高めながら、変化に順応していくと良いと思います。

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ポストコロナで必要なスキルその2「興味を育てる力」

Q:「言語化力」以外にこれから伸びる人の条件になりそうなスキル・能力はありますか?

「興味を育てる力」です。これからは、仕事かプライベートか関係なく、興味を発見し自ら追究することが、働き方や生き方を選択する基準になりうるからです。たとえば、自分の興味が明らかになることで、自分らしい働き方を考えて副業や兼業を始めたり、専門性を高めてキャリアップするために勉強を始めたり、首都圏から地方を生活の拠点に選んだりする人も出始めています。

これまでは仕事や働き方は会社から与えられるもので、それをこなすことが良いことであり、個人の好き嫌いは表に出すべきではない、という観念も少なからずあったかと思います。しかし、これからは「私はこれが好きだから、興味があるから仕事を創り出す」くらいのクリエイティブな人が強いと考えています。

特に今回のコロナ禍では、自身の在り方や家族や会社との関係性を深く考え行動に移す意味で、一人ひとりのクリエイティブ性が試されたように思います。この期間で「何もしなくていいんだ、ラッキー」と思って何もしなかった人と、「自分は何をしたい/すべきなのだろうか?」「どうしたらもっと豊かな生活ができるだろうか?」という問いを立ててアクションした人とで、行動は二極化したように感じます。

クリエイティブな人というと、「右脳的なひらめきが湧く人」を想起するかもしれませんが、私は「自分ごとで考えられる人」や「別領域や興味と結びつけられる人」がそれに近いと考えています。考えるためには情報収集が欠かせませんし、情報に対して「なぜなのか」問いかけます。そういった人は、結果として会話の引き出しがたくさんあり自分の考えも持っているので、話をしていて面白く、社内でも人気があります。この延長線上に、"コミュニケーションを取りたい人"としてさまざまな機会で「選ばれる人材」になるのだと思います。

「自分が好きなことをやる」が現代における大人の学び


Q2つの力を培うために、働く個人は何をすればよいのでしょうか。

自分の興味を深める「学び」が大切だと考えます。

学びといっても大上段に構える必要はないと思います。〇〇のためという明確な目的がなくても、「面白そう」と思ったことはとりあえずやってみる。三日坊主だっていいのではないでしょうか。自分自身が面白そうだと思って始めたものの、そうでもなかった、ということが分かればいい。一目惚れ的に学び始めて、結果没頭することもあれば、飽きてしまっても何かしら発見があったのだと自分を許す。その積み重ねが学びだと僕は思っています。

キャリアや資格といった目的がないと「学び」ではないと思われる方もいるかもしれませんが、それは学びの一側面だと思います。これからの時代は、自分の興味本位でどんどん深めてみる。趣味として終わってもいいですし、いつか学びを自身の仕事やキャリアに結びつけることもいいでしょう

"学び直し"は働き方の文脈でも重要なキーワードです。リンダ・グラットンの『ライフ・シフト 100年時代の人生戦略』が出版されてから特に注目を集めるようになりました。人の寿命が伸び、逆に企業の寿命が短くなっている今、良い大学を出て良い会社に入って定年まで勤め、定年後はのんびり過ごす・・・というようなキャリアプランは、もはや崩壊しつつあります。学んで働き、また学んで別の仕事をする・・・を繰り返すスタイルが今後はスタンダードになってくると考えると、興味を深める学びは一層大切になるでしょう。

Q:大人の「学び直し」の慣習がほぼ全くなかった日本では、仕事を辞めてまで大学に入りなおすといったことは、なかなかリアリティがありませんでした

現在は以前と比べて圧倒的に学びやすくなっています。大学の授業をオンラインで視聴できますし、動画学習サービスも充実してきています。隙間時間で学ぶサービスはたくさんあるので、仕事をしながらでも興味さえあれば学び環境は整っていると思います。

言語化力を鍛えるという点では、読書は効果的だと感じます。ビジネス書でもいいですが、情景を想起させる表現が豊富な小説もコミュニケーションに役立つ美しい日本語を学ぶには適しているように思います。

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個人の自由とゆるやかな規律のバランスが重要課題

Q:働き方の変化に対して雇用する側は何が課題になると思いますか?

社員の特性や企業文化にも関わるので、何が正解とは一概にはいえませんが、自由な働き方に呼応した規律やビジョンを立てることが重要だと考えます。自由と規律が両立するところに自律的な人間が生まれるという考え方ですね。米国Amazon.incの「14の行動指針」はその一例です。

自由と規律のバランスをどう取るかは会社によって違います。社員がどんな意志や願望を持っているかを確認しながら、会社の中長期計画ともすり合わせて調整する必要があるでしょう。たとえば、Google3Mでは「20%ルール」は一時期話題になりました。本業とは関係ない取り組みを業務時間の20%を使って自由にやってよいというもので、社員の興味・関心を会社が支援する仕組みです。

しかしながら、これも社員に深い興味や行動意欲があることが機能する前提になるので、社員の意識を見つめることが大切です。もし興味の追究や学びが追い付いていないのであれば、学習費用を補助したり、学びのイベントを開催したり、大学・eラーニング等での学び直しを支援したりすることが期待されます。

また、副業・兼業を認めるというのも新しい世界での挑戦や学びを後押しすることにつながると思います。

Q:最後に、田中さんは普段どんな学びをしていますか?

私は今、歴史にはまっています。動画配信サービスでローマ帝国などの番組などを見ていると、人の心理がとても面白いんですね。なぜ国が繁栄したのか、なぜ人の心を掌握できたのか、分かるようになるとどんどん面白さに目覚めていきました。今は自分で専門書を買って歴史を学びなおしています。学生時代は歴史が大嫌いだったんですが、、、。分からないものです。単なる史実ではなく、なぜそうなったのかを抽象化することで、今のワークスタイルの研究やキャリアに生かせるものもあるように思います。

また、学びといえるかどうかわかりませんが、絵も描いています。純粋に好きでやっていることですが、制作しながら自分の内面に向き合うので、結果的には学びにつながっているのかなと思います。

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ありがとうございました。

同じカルチャーを共有している「カイシャ」の中での働き方が変わると同時に、ポストコロナにおいては「カイシャ」の枠を超えて、最初から最後まで一度も対面することなく仕事を遂行する、なんてこともますます増えてくるかもしれません。「言語化力」と「興味を育てる力」がますます大事になりそうです。

「大人の学び」シリーズ2回目は、日常生活の中で「言語化力」を高めるための「アウトプット習慣」についてご提案します。

2020年7月30日公開

ポストコロナの「働き方の変化」から「大人の学び」を展望する② ~1日15分、アウトプット習慣のススメ~

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本記事でご紹介した「ポストコロナに向けた働き方の変化」の詳細レポートについては、コチラ↓からダウンロードしていただけます。


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