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「変えないこと」がはっきりしているから、進化できる~株式会社金太郎飴本店 渡辺社長に聞く~

2020.07.13

「変えないこと」がはっきりしているから、進化できる~株式会社金太郎飴本店 渡邊社長に聞く~

「変えないこと」がはっきりしているから、進化できる~株式会社金太郎飴本店 渡辺社長に聞く~

東京・台東区 三ノ輪で120年以上の伝統を受け継ぐ「金太郎飴本店」。どこを切っても同じ模様が出てくる「金太郎飴」(※)を初めて世に送り出したお店です。飴と文具、一見全く関係ないように思える両者には普遍的な接点が。6代目社長 渡邊彰男氏にお話をお聞きしました。(※)「金太郎飴」は、(株)金太郎飴本店の商品「組み飴」に係る登録商標です。

金太郎飴本店とコクヨの出会いは、数量限定販売するための文具の開発でした。文具のもつワクワク感とお菓子のもつワクワク感をかけあわせられないか。担当者が辿り着いた先が、コクヨと同じく明治生まれ、東京・台東区で120年以上の歴史を持つ金太郎飴本店。古くて新しいコラボレーションの背景にあるストーリーをご紹介します。

※文中社名敬称略

強く元気に育ってほしいという願いがヒットの原点

‐創業の頃のお話からお伺いできますでしょうか?

もともとは、このすぐ近く、背向地蔵尊(うしろむきじぞうそん)がある薬王寺の参道で飴を売る露天商から始まったと聞いています。正確な創業日が記録に残っているわけではないのですが、今から120130年前、明治の初め頃のことです。

‐当時から「金太郎飴」を作っていたのでしょうか?

いえいえ。最初はニッキ味の飴玉だったようです。「金太郎飴」のように、板状の飴を伸ばして絵柄をつくり、それを棒状にして伸ばして切る、というのは江戸時代の頃に関西で始まった「組み飴」と言われる飴細工の製法ですが、この技を2代目が習得してきまして、絵柄を「金太郎」にして売り出したのが「金太郎飴」の始まりです。

‐なぜ「金太郎」だったのでしょうか?

当時、飴の消費者といえば主に子どもたちでした。これも記録がしっかり残っているわけではないのですが、明治の終わり頃、子どもたちの誰もが知っているキャラクターの代表格が「金太郎」だった、というのは大きいと思いますね。みんなのヒーロー的な位置づけだったんじゃないかと思います。

それと、当時は今ほど医療が進歩していませんので、幼くして亡くなってしまう子も結構多くいました。飴で糖分をしっかり取って、金太郎のように強くて元気な子として育ってほしい、という願いを込めて作られたものだと聞いています。

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株式会社金太郎飴本店 代表取締役社長 渡邊彰男氏。大学卒業後2年ほど他社で経験を積んだ後、父であり現会長である渡邊鐵男氏が社長を務めていた株式会社金太郎飴本店に入社。2017年、代表取締役社長に就任。取材当日は愛用の「金太郎柄」マスクで。

‐飴に込められた願いが当時の人々の心をつかんだのですね。

2代目はできあがった飴を「金太郎飴」と称して全国に売り歩きました。これがあちこちで大ヒットしまして、次第に「金太郎飴」が全国で知名度を持つようになっていったようです。

その後、東京で組み飴の職人さんを育てることにも力を入れ、弟子の職人さんにのれん分けしたことも、「金太郎飴」が広がった要因だと思います。

組み飴の技術を守り伝える

‐どこを切っても同じ絵柄の飴はどうやって作るのでしょう?

まず出来上がりの絵柄デザインを元に、水あめと砂糖を溶かした飴に色を付け、機械で練っていきます。その後、板状に伸ばして部品をつくり、重ねて組み合わせていきます。

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職人の皆さんが色がついた飴を必要な分だけ板状にしていきます。

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出来上がりの絵柄を見ながら、黙々と板状の飴を組み合わせていきます。

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4~5人での作業。それぞれのやるべき作業を息のあったタイミングでこなしていきます。

直径3040㎝くらいある太い棒状の飴のカタマリができたら、それを機械にかけて細く伸ばしていきます。

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組みあがった飴は重たいので2人がかりでまわし、まず人力で少し伸ばします

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飴が冷めないうちに機械へ。回転させながら飴を伸ばしていきます

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少しずつ引っ張りながら直径3㎝ほどの細さに伸ばして伸ばして・・・

太さをそろえた状態で50㎝程度にいったん切りそろえて、これをさらに機械で厚さ1㎝程度に切ると、「金太郎飴」の出来上がりです。

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細く伸ばした飴を切って温かいうちに回して形を整えます

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最後に1㎝くらいの厚みに切り、選別作業を行います

‐素人の目では完成イメージが全く分かりませんが、職人さんには分かるんですね。

そうですね。そこが組み飴職人の技術です。「どこを切っても同じ」が「金太郎飴」の枕詞ですが、よく見ると微妙に表情が違ったりします。じっくり見ると結構面白いんですよ。また、職人によってちょっとずつ顔に個性が出たりすることはありますね。

とはいえ、基準になる「金太郎」の顔は守っていく必要があるので、安定して絵柄に沿った金太郎の飴が作れるようになるまでに、だいたい3年かかります。私自身も社長になる前は毎日飴づくりをしていましたし、今も工場に立っています。職人の腕を判断するのは私の役目ですね。

「変えないこと」がはっきりしているから進化できる

‐明治から今に至るまで続くお店の将来像は?

これからも飴でやっていくこと、そして、「金太郎飴」の技術を守りつないでいくこと。この2つは変えるべきではないと思っています。金太郎クッキーとか金太郎チョコレートは作りません。

一方で、技術を継承していくために使えるテクノロジーがあるなら積極的に取り入れるべきだと考えています。技術の継承に必要なのは、古いやり方に固執してその通りにやり続けることではなく、愛され続ける「金太郎飴」を後世に伝えるために常に最適な方法を探ることだと思うからです。

‐今年の春は未曽有のコロナ禍で「アマビエ飴」が大人気でしたね。

48日に緊急事態宣言が発令されてから、お店にまったく人が来ない状態が続きました。デパートの催事場などでの販売も当然なくなり、どうしたものかと考えていた時に、疫病退散するとされる妖怪「アマビエ」を知りました。すぐに「アマビエ飴」を作ることを決め、取り掛かりました。細かい絵柄を組み飴で表現するのは大変でしたが、ネットで販売を始めると瞬く間に話題になって、むしろコロナ前より忙しいくらいでした。

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非常に細かい模様のアマビエ飴

100年以上続けてきた「金太郎飴」ですが、細かい絵柄の表現だったり、印刷に近いくらいに均一感を出すことだったり、技術を磨いていく余地はまだまだいくらでもあります。

今後時代はますます大きく変わっていくかもしれませんが、飴と飴を作る技術にこだわって、努力を続けていくことが私たちには重要なことなんです。

 

 

「金太郎飴」とコラボレーションノート、表情の違いが見どころ

‐最後に文具の話を聞かせてください。金太郎飴本店さんで日常的に使う文具といえば?

12色の色鉛筆ですね。オーダーメードで独自の絵柄の飴を作って欲しい、というご依頼を受けることがありますが、なにぶん食べ物です。再現できる色にはどうしても限界がありまして、PANTONEの何番だ、と言われましてもなかなかその通りにはいきません。そんな時、お客様には、「12色の色鉛筆で描ける範囲にしてください」という説明をさせてもらって、実際、色鉛筆で絵を描いて、飴の絵柄を決めたりしますね。

色鉛筆以外でいうと、コクヨさんの昔ながらのバインダーを大事に使っています。私たちのお店ではまだまだ事務作業の基本は紙なので、バインダーは必需品です。

‐今回コラボレーション文具を見た時、どんな印象でしたか?

現代的な金太郎の顔はちょっと新鮮でした。ノート4冊を使って、金太郎の「喜怒哀楽」を表現しているのも面白いですね。それと、ノートの色あいは、まさに「金太郎飴」で使っている色をそのまま使ってくれているのですが、トレンド感のある店舗に並べても雰囲気が合う、と言われてなるほどなぁ、と感心しました。

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金太郎の顔で喜怒哀楽を表現した4色のA6サイズのノート

‐「金太郎飴」の写真を真上からみたクリヤーホルダーは渡邊社長からのアドバイスだったとか

ノートで金太郎の喜怒哀楽を表現してくれていますが、実際の「金太郎飴」も上から見ると、微妙に笑っているような顔もあれば、怒っている顔もあって、見ると愛着が湧くんです。今回の文具を通じて、そのあたりも知ってもらえる機会になればうれしいです。

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「金太郎飴」を真上から見た写真のクリヤーホルダー

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「金太郎飴」ノートと渡邊社長。金太郎飴本店の店舗にて

‐本日はお忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。

 

 

取材を終えて

「変えない」と決めていることがあるからこそ、毎日努力もできるし、その積み重ねで進化していく。それこそが伝統をつなぐということなんだ、と、渡邊社長のお話を伺い、また、「金太郎飴」の製造工程も見せていただきながら感じました。

コクヨも今年で創業115年。今回、コラボレーションさせていただいた測量野帳は、発売から60年以上が経過している伝統の商品ですが、こちらも、基本の価値であるサイズと表紙の硬さにこだわりつつも、使ってくださる方の広がりや用途の多様性に合わせて、色やデザイン、罫線などさまざまな工夫をし続けています。「金太郎飴」と同様、こだわるべきところにこだわりながら、進化し続けることで、これからも長く愛される商品を作り続けたい、という思いを強くした一日でした。

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金太郎飴本店とコクヨのコラボ商品

クリヤーホルダー(A4サイズ/野帳サイズ)/測量野帳/ロールシール
/ミニ一筆箋(ほんのキモチ箋 「金太郎飴」バージョン)/A6サイズノート

7月13日より、全国のロフトにて数量限定で販売されます。

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